社会不適応雑技団
年始に母親が従業員へと気を遣ってもたせてくれた銘菓を、年末にバイトを辞めたせいでひとり毎日食べ続けている。憎たらしい社員たちの名前を、ブッセと餅の間に織りこみながら月末まで生きた。
暗闇を慣れないヒールで歩いていたら念仏を唱えながら歩く老人にぎょっとされた。わざと声をあげて驚いてみた、やるせない。夜の帳の内側から出られずにもがくのは陽光も人も同じで、冬の明け方を嫌々に新しいバイトへ向かう。
今日から勤務だと現場の誰も知らされておらず、私は朝食会場へ突如タイムワープした人になる。名前も素情も知らないがバッシングは妙に早い人として、ひたすらにお客が帰ったあとのテーブルを片付けた。
春の私は、夏の私は、どこで母親がもたせてくれた銘菓を食べているのだろう。