乳と蜜

柔らか巡礼

Entries from 2020-04-01 to 1 month

一方的書簡①

合格祝いにタイ料理を食べたあとに入った地下の喫茶店で私の注文したドーナツを横取りした少年へ 混乱と陰鬱の分厚い雲が私たちを覆う春が来てしまったけれど、お元気ですか。ネット上であなたが大学を去ったことを知りました、哲学と煙草は今でも好きですか…

煙の先の季節

はっきりと事柄を明示しない文章を書くことが好きで、真夜中の仄暗い建物の中で目を凝らしても最後までは追えなかった副流煙の先をいつまでも探している。 停滞を知らない感染者数のグラフと労働先の休業から生まれた孤独と、幾つかの選択肢の中から自由意志…

冷凍都市で出逢ったら

闇金で借り入れたお金を握りしめ現れた錬金術師はその場にいた誰よりも笑顔で、マイナスから私のお別れ会を作り出す。3年前の夏の盛り、伊豆の山奥、従業員専用の喫煙所は岩場の陰に、それはまるでルルドの窟。墨汁を煮詰めたような労働環境で、15時過ぎにや…