乳と蜜

柔らか巡礼

うつくしい子ども

 右スワイプをしすぎて親指の皮膚が硬くなってきた気がする。樹上の果実を取れないキリンの首は長くなり、夜の越え方を知らない女子大生の親指は硬くなる。

 

 マッチングアプリ内でマッチした人たちに私が恋をしている相手の名前で呼んでもらい、お腹の底の方をムズムズとさせていた明け方。素敵な名前だと四方から光が降り注ぐ度に、誇らしさと寂しさが沸き立った。あなたの名前をつけた人はとてもセンスがいい。

 

 2年前に牛小屋での濡れ場がハードすぎる映画を一緒に観に行った友人と、久方ぶりに飲みに行く。あの頃の私たちは世間知らずのゲイとレズビアンで、綿飴みたいに甘いだけのべとつく妄想の中で暮らしていた。ギネスビールの泡を口元につけながら、先月デートした相手の話を楽しそうにしてくれる彼が可愛らしかった。

 

 ハライチの岩井によく似た、読書家のホストがお薦めしてくれた本を読んで眠る。